『台湾の表層と深層:長州人の熱情と台湾人のホンネ』、福屋利信著、かざひの文庫、2017年。

わたしは「哈台症(台湾が好きでたまらない病気)」の重篤な患者であるため、台湾関係の本は見逃しません。(注1)

本書は山口大学・福屋教授(1951年生まれ)が執筆されたものでした。
専攻は音楽社会学の由です。

まずは台湾の映画およびポップスの紹介。

ご紹介された映画のうち、わたしは『KANO:1931 海の向こうの甲子園』をDVDで、『海角七号:君想う、国境の南』『湾生回家』はYouTubeで、それぞれ観たことがあります。
感動の嵐でした。

ただ、日本向け『KANO』はかなり短めに編集されてしまっており、これは非常に残念でした。

音楽については『望、不忘春風』というアルバムを取りあげられた際、

これだけ、日本の昭和初期に対するノスタルジーを前面にだした作品が近年台湾で発売されたということは、このアルバムを前述の台湾における「懐日」ブームの延長線上で捉えることが可能であろう。このアルバムが台湾のヤング・アダルト層の支持を集めているという事実が、日本人として嬉しい。(pp.225)

なのだそうです。

本書が提供しているのは映画や音楽の情報ばかりではなく、たとえば、第3章「長州人が台湾近代化の過程で形成した親日感情」。

著者は、日本が台湾を統治していた時代の歴代総督(桂太郎、乃木希典、児玉源太郎、佐久間左馬太)が長州出身者であったことから、

楫取道明の名は、台湾教育界では有名であるし、長谷川謹介、賀田金三郎の功績も再評価しようとする動きが台湾にも日本にもあることは嬉しい限りだ。この3人と前述の総督4人は、誰もが長州人らしい進取の気風で、台湾と真摯に対峙した。(中略)
「利他即自利」の鉄則を貫き台湾の文明開化に貢献しようとした明治の長州人たちの営為は、台湾の人々に受け入れられ、台湾が「世界一の親日国家」に至る基点となった。(pp.138)

こう記されました。(注2)

長崎生まれの身にとって、うらやましい、ねたましい事実です(わたしはいま「台湾の英雄・鄭成功は長崎県平戸市出身である、台湾で研究した植物学者の堀川安市も長崎人だった」と書いて応戦したい気持ちを一所懸命抑えています)。

くやしまぎれであることを認めつつ言いますが、出身地はどこであれ、長崎県でなくても、わたしは良好な台日関係を築いてくれた歴史上の人物たちを心から尊敬します。

向後そういう日本人が続出してほしいです。

最後に、著者は山口大学教授であるばかりではなく台湾開南大学の客員教授でもいらっしゃるとのことで、これまたうらやましかった……。

(注1)台湾には「哈日症」という言葉があり、「日本が好きでたまらない病気」を意味しています。本項では、この語をまねて「哈台症」を用いました。

(注2)2017年現在、台湾と良好な関係を保とうと努力している安倍晋三総理も、選挙区が山口県です。

金原俊輔