『木村塾の奇跡:人生が劇的に変わる!』、木村吉宏著、PHP、2019年。

1986年、3月。24歳だった私は、実家の2階、8畳間に小さな塾を開きました。
コンセプトは「絶対に生徒を見捨てない塾」。(pp.1)

印象的な文章で始まる教育ドキュメンタリーでした。

著者は「木村塾」創始者でいらっしゃる木村氏(1961年生まれ)。

氏は学力が十分ではない塾生たちに成長するきっかけを与えつづけ、その結果、

あれから30余年。いま、木村塾は株式会社ヒューマレッジとなり、尼崎市、西宮市、伊丹市など阪神地区及び大阪北摂地区に28校舎(平成31年春に3校新規開校計31校舎)、生徒数約7000人を超える規模にまで大きくなっています。(pp.2)

とのこと。

すばらしいご発展と思います。

ご発展には理由があり、塾が有する熱い先生がた、先生がたの効果的な教育法、塾にただよう良い雰囲気……、発展を促すスタッフ・事柄に関し、著者は具体例を交えながら詳しく語られました。

まず、教師陣を見てみましょう。

篠原先生という若い女性は、塾の夏合宿で、

生徒たちがいっこうにやる気を見せなかったため、篠原は空回りする自分が情けなくて、人目につかないところで涙ぐむありさまでした。
合宿初日の深夜、生徒たちが寝静まったあと、篠原は思いきった行動に出ました。班の子どもたち一人ひとりのノートの表紙いっぱいに、思いをこめて激励のメッセージを書いたのです。
翌朝、メッセージを発見した子どもたちは口々に驚きの声をあげました。
「メッセージ、むっちゃ長いんやけど!!」
「めっちゃ感動してんけど!」
「一生捨てられへんよ、このノート!!」
この表紙いっぱいのメッセージがきっかけで、子どもたちの心に火がついたのです。勉強嫌いの子どもたちが、自主的に猛勉強を始めました。(pp.91)

感動せざるを得ません。

つぎは、むずかしい男子中学生を変身させた教育法について。

自分の好きな「数学」だけは勉強するけれども、それ以外の科目は一切勉強しないというとても変わった生徒のエピソードです。もちろん、成績は学年でかなり下位の生徒でした。
そして、よくよくお母さんに訊(き)いてみると、実はその子は発達障害を持つ生徒だったのです。(pp.25)

担当者らは「まずは英語の勉強を1ページでもいいから(pp.26)」やらせる取り組みをおこない、課題どおりやってきたときには本人を褒めちぎる対応も付け加えました。

やがて中学生は「数学以外の科目も一生懸命勉強するようになり(pp.26)」、地域トップレベルの高校へ進学、3年後には大阪大学に合格した由です。

最後は、塾のムード。

木村塾には「『国・私立中学受験指導』の『SEED』という部門(pp.61)」があるそうなのですが、

Nさんは、塾というところが嫌いだったので小5の12月まで塾には入らなかったそうです。「塾ってどうせ宿題ばっかりで、なんか面倒くさい」。これがNさんの塾へのイメージだったようです。(中略)
そんなNさんが少しずつ変わり始めました。最初のきっかけは「SEED」の生徒たちの多くが、「誰にも強制されていないのに」自ら進んで毎日自習室に行って勉強していることにびっくりしたことでした。自分だけ置いていかれる気がして、彼女も自らの意志で毎日自習室に行くようになったのです。(pp.62)

彼女は神戸海星女子学院に合格しました。

『木村塾の奇跡』、以上のようなエピソードが相ついで登場します。

わたしは本書をとおし、教育にはやはり情熱が大事なのだということを学びましたし、成長する企業は成長へ至るのが当然な独自の仕事術を開発している事実を再認識させられました。

つまり「ビジネス書」としても読める一冊です。

金原俊輔