最近読んだ本434

『「民間学童」のつくり方・運営の仕方』、遠藤奈央子 著、日本実業出版社、2019年。

ふだん当コラムで評している書物類に比べるとやや発行年が古い作品なのですが、わたしは学童保育領域に漠然と関心をもっているため、先日、書店にて上掲書を見つけた際、喜んで購入しました。

民間学童を経営し、さらに拡大・成長を目指している私が、なぜ民間学童のつくり方・運営の仕方のすべての手の内を公にする本書執筆に至ったのか。(pp.238)

ご自身でおっしゃるとおり、著者の遠藤氏は微に入り細をうがち学童保育の開設・経営を説明してくださっています。

一箇所だけ引用すると、

中期計画(5か年経営計画)を立てる目的は、将来のあなたの学童保育のあり方を決めることです。あり方とは、さらなる成長を目指して複数の学童保育を設立していくことや、逆に1つの学童保育で、よりお客様の満足度を高めていくこと、もしくは学童保育に関連するそれ以外のサービスを開発・実施していくこと、など様々な選択肢があります。(pp.109)

たしかに。

とても参考になる本であり、学童保育ビジネスを超え、教育ビジネス、いや、むしろ全ビジネスに携わる人々にとって指針になる内容だった、と感じます。

著者が惜しげもなく書中で語られた重要話題をわたしが勝手に紹介するのは礼儀にもとる行為ですから、読んでいたときつらつら考えた3点について書かせていただきましょう。

まず、民間学童保育では子どもさんを1時間お預かりする料金はいくらになるのか、当該保育所に所属される職員諸氏の時給はおいくらなのか、光熱費だの家賃だのは1時間に換算すると何円であるのか、以上の事柄が気になりました。

なぜかを「1時間」を軸に述べれば、保護者がご自分の労働で得られるお給料(時給)を上回る学童保育料金(1時間あたり)である場合「働かないほうがお得」となってしまうからです。

そこで、学童保育側はどうしても低い保育料金額を設定しなければならず、しかし、そうすると職員への給与も低くなってしまい、結果的に職員の離職率が高まる、あるいは職員を公募しても志願者が集まらない、こうなりかねません(光熱費・家賃はほとんど下げようがないでしょう)。

もし学童保育経営に関わるとしたら、この辺をきちんと計算しておかなければ……。

ふたつ目は、学童保育の土曜・日曜・祝祭日オープンです。

公設公営の学童保育は「土・日・祝はお休み」というところが多数みたいで、いっぽう左記の曜日にお仕事をなさらなければならない親ごさんは少なくないはず。

うろおぼえで恐縮ですけれども、有職者のうち土曜や日曜に勤務しているかたがたは全体の50パーセント近くにのぼると聞いたことがあります。

そうした層を対象に週末・祝日の学童保育サービスを実施するとしたら、みなさまのお役に立ち、また、社会にとっても有益なのではないか、と推し量(はか)りました。

最後は、民間学童保育の開校などよりも、利用児童たちのバス送迎をアウトソーシング的におこなうとか、学童保育用の給食配達事業を始めるとか、深夜までの学童保育を試みてみるとかは、どうかな、とも考えました。

わたしが現時点で手をだすのは容易ではないですが。

以上の3点ごとき、遠藤氏はとっくの昔に検討したり対応なさったりしておられるだろうと想像するものの、門外漢のわたしですらこんな思いつきを浮かべるぐらい『「民間学童」の~』は刺激に満ちた解説書だったのです。

金原俊輔

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