『やめられない:ギャンブル地獄からの生還』、帚木蓬生著、集英社文庫、2019年。

上掲書の前半は、ギャンブルなかでもパチンコやスロットに嵌(は)まってしまい、どうにも抜けられなくなった人々のエピソード集でした。

鬼気迫る内容です。

ある男性の場合、

結婚するにあたってひらめいたのが、高校を卒業して10年は働いている彼女だから、貯金があるはずだということです。(中略)
彼女は同情的な顔になり、いったいいくらくらいの借金かと訊いてきました。350万だ、と私は答えました。その頃、実際は600万円くらいの借金になっていたのです。
そのくらいなら負担してもいい、二人で働けば、どうにでもなると彼女は答えます。押しきられるようにして、私は彼女の両親に会わせられました。
私の両親にも会いたいという彼女をおしとどめ、借金の返済を先にしたいと主張しました。彼女が現金を350万用意して、4社のサラ金に一緒に返しに行きました。(中略)
そんななか、私が互助会のお金を流用していたのが発覚しました。(pp.56)

別の男性は、

父親が出してくれたのは600万円でした。使い込んだ会社の金はそれで穴埋めができるし、サラ金への返済もほとんどできるのです。しかし私は全額を返さず、借金を100万ほど残し、60万円をネコババしました。いつかまたパチンコをするときの資金にしようと思ったのです。そして100万円くらいの借金なら、いつでも返せるという肚(はら)がありました。(中略)
残っていた100万円の借金が200万にふくらむまで、3カ月とかかりませんでした。(pp.70)

読んでいて恐ろしくなりました……。

わたしはまったくギャンブルをしません。

ギャンブルだけではなく、囲碁・将棋・チェス・トランプなどとも無縁ですから、要するに自分の身体をつかわない勝負ごとに興味がないのです(格闘技みたいな身体を張った勝負は大好き)。

しかし、カウンセラーである以上「興味がない」とばかり言っているわけにもいかず、この『やめられない』のような書物を通して、ギャンブル依存症のかたがたのお苦しみ、生々しい実態、を学んでおく必要があります。

そういった意味で本書はたいへん参考になりました。

後半のテーマは、ギャンブル依存症の治しかたです。

精神科医でいらっしゃる著者(1947年生まれ)は、入院治療を受けたのち、自助グループに参加することを勧めておられます。

これこそ「治しかたの王道」。

わたしはアメリカ留学中、公的な自助グループにてインターンとして働きました。

アルコールおよびギャンブルの問題に悩む大人たちを支援していたグループです。

しかるに、当該グループも、わたし自身も、さしたる成果をあげることはできませんでした。

ギャンブル依存症への対応は非常に難しく、上述のように王道ですら限界があるのですが、それでも王道的な関わりをしっかり押さえておく介入法は大切と考えます。

ここで、行動療法家のわたしは、ギャンブル依存症が「オペラント条件づけの結果」である事実を書きたくてたまらないものの、オペラント条件づけだからといって有効な改善策を導きだせるわけではないため、やめておきましょう。

金原俊輔