最近読んだマンガ20
『ペリリュー:楽園のゲルニカ 6』、武田一義作画、白泉社、2019年。
太平洋戦争末期の1944年、パラオのペリリュー島において、日本軍と米軍が激突しました。
「ペリリューの戦い」と呼ばれています。
凄絶な戦闘でした。
この戦いをマンガで再現したのが、今回紹介する『ペリリュー』です。
良質な戦争マンガ。
史実を丸っこく可愛らしい絵柄で活写しています。
わたしは第1巻に接した際、丸っこさ、可愛らしさに、しばらくとまどいました。
やがて慣れ、「むしろこんなに深刻な物語にはこちらのほうが正解だ」とさえ感じだしているところです。
もしもリアルな劇画タッチだったら、続出する悲惨なシーン、われわれ読者にはきつかったのではないでしょうか。
本作の大きな特徴は、日本人兵士が主人公ながら、日本軍・米軍のどちらにも偏らず、かなり中立的な語り口で話がすすむ点です。
作者(1975年生まれ)は「何々が悪い」と糾弾するのではなく、戦争自体の理不尽さ、戦闘のむごたらしさ、命の脆(もろ)さ、命の尊さ、を淡々と描かれました。
公平で冷静な作品です。
印象的な作品でもありました。
わたしは多数の戦争マンガを読んできているわけではないものの、これまで目をとおしたなかでは、
水木しげる作画『総員玉砕せよ!』、講談社(1973年)
バロン吉元作画『昭和柔侠伝』、双葉社(1973年)
ちばてつや作画『紫電改のタカ』、講談社(1976年)
手塚治虫作画『紙の砦』、講談社(1983年)
おざわゆき作画『凍りの掌:シベリア抑留記』、BE LOVE(2015年)
などが印象にのこっています。
戦争体験がない世代に属する身ですが、戦争が恐怖および絶望である事実を認識させていただきました。
『ペリリュー』も人を同様の読後感に至らせる力を有していると思います。
わたしにとって本書は上掲5編に匹敵する一冊となることでしょう。
金原俊輔