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『迫りくるアメリカ 悪夢の選択:南北戦争か共産主義革命か!?』、宮崎正弘、渡邉哲也 共著、ビジネス社、2021年。

バイデン新政権はアメリカ合衆国をいかなる方向へもってゆこうとしているのか、トランプ前大統領の影響がすこしは残るのか、大統領選であらわになった国民間の分断は修復できるのか、新型コロナウイルス感染症拡大による米国経済の停滞は改善するのか……。

『迫りくるアメリカ 悪夢の選択』は、こうした疑問を、昨今活発な政治経済評論を展開しておられる宮崎氏(1946年生まれ)と渡邉氏(1969年生まれ)が、提示・考察なさった対談書です。

お二人の対談は、話題がアメリカにとどまらず、日本や諸外国にもおよびました。

時機に適合したトピックがたくさん語られ、そのおかげで、内容がとてもおもしろかったです。

わたしは種々の事柄を学ぶことができました。

うち3つを、ご紹介しましょう。

まず、トランプ前大統領が2019年12月そして2021年1月に弾劾訴追された件。

宮崎  メディアは「史上2度も弾劾訴追を受けた大統領」と報じましたが、「2回も弾劾訴追に失敗した民主党」という視点はスッポリ抜け落ちている。トランプの発言にどれだけフェイクがあったか数えるのは勝手ですが、トランプに対するロシアゲートやウクライナゲートが民主党やリベラル・メディアが、でっち上げだったことへの考察や反省が一切ないのでは片手落ち。というより、偏向にしても露骨すぎる。(pp.36)

わたし自身「2回も弾劾訴追に失敗した民主党」の視点を有していなかったので、啓発されました。

ご指摘を感謝します。

つづいて、半導体のこと。

宮崎  2020年の秋くらいからですか、深刻な半導体不足に陥っていることがあらわになりましたね。
これも、新型コロナウイルスが原因で、テレワークの普及によって、データセンターの需要が高まり、パソコンに使う電源管理用の半導体がまず足りなくなった。そのうえ、中国の自動車市場が回復して、車の半導体が足りなくなった。
(中略)
渡邉  なぜこれを量産できないかという理由が面白くて、なんと味の素のせいなのです。
宮崎  え、味の素が?
渡邉  味の素。日本の味の素が、味の素で培ったアミノ酸に、半導体をつくるときの絶縁体、味の素のアミノ酸技術でつくられた絶縁被膜がないと世界の積層型半導体が作れない。シェア100%なんですって。世界中で。これがないと半導体の生産が止まる。つまりこの供給量に合わせてしか世界中の半導体はつくれないということです。(pp.150)

こんな事実があるそうです。

味の素社がもっていらっしゃる意外な凄みでした。

最後は、先の引用に関連する情報。

渡邉  通信関係だけでいっても日本に30社ぐらい、日本でしかつくれないメーカーがあるのですよ。世界シェア100%の企業が。ただ後方支援部分だからそれが見えない。
たとえば、アンリツという会社は日本の検査機器メーカーですが、この会社の検査機器と測定や設計技術がないと5Gのネットワーク構築が難しいわけです。
日本政府としては安倍総理が、そのようなオンリーワン企業を割り出し保護するという方針を決めました。その上で、甘利さんを中心にその実現に向けて動き出しています。(pp.167)

しっかり動かれてください……。

本書を読了し、わたしはアメリカがどのような低迷・混乱・暴走に陥ろうとも、日本は腹を据え同国との緊密な関係を維持すべき、と思いました。

さらに、わが国は長らくアメリカの庇護のもとアジアでは稀有(けう)な安全保障環境に身を置いてきたわけですが、残念ながら近年これによる平和がいつまでつづくか想定できない状況にいたっています。

自国の安寧を守るための憲法改正や防衛力強化に努めなければならない、と考えます。

もうひとつ、わたしは『迫りくるアメリカ~』をとおし、やはり科学技術の進歩は国家にとって必須の課題だと再認識することができました。

毎日、現場で精励なさっている本邦科学者・技術者のみなさまにたいし、心から御礼申し上げます。

金原俊輔

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