最近読んだ本469
『最後の読書』、津野海太郎 著、新潮文庫、2021年。
津野氏(1938年生まれ)は、わが母校・和光大学の教授でいらしたそうです。
わたしは在学中、氏の講義を受けた記憶がないですし、お名前も存じておりませんでした。
ご生年から逆算すると、当方が卒業して月日が経ったころ和光大学へ着任なさったのでしょう。
さて、上掲書は、津野氏が80歳だったときに単行本で出版された作品。
「老いと読書(pp.337)」を主題とした書評です。
2021年、単行本が文庫化されました。
文庫化の折、氏は「あとがき」に「追記」を加えられたのですが、
2018年11月に本書をだしたのち、そこに登場していただいた(中略)7氏がなくなった。(pp.328)
こういう悲しみを日々経験するのが「老年後期(pp.23)」であるみたいです。
66歳のわたしにも目前に迫っている現実で、迫っているどころか、すでに多数の大事な友人たちを失いました……。
『最後の読書』は、全17章で構成されています。
第1章のタイトルは「読みながら消えてゆく」。
第2章は「わたしはもうじき読めなくなる」。
第4章「目のよわり」。
身につまされつつも、なんだか笑ってしまいます。
笑いながら書かせていただきますと、活字中毒なわたしは、老いて本を読めなくなってしまう事態が怖く、そんな暗黒事態を津野氏がこちらに先行し味わってくださっているように感じました。
願わくば命が尽きる当日まで書物に接してゆきたいものです。
ところで、第7章「蔵書との別れ」では、すこしばかり優越感をおぼえました。
章のテーマは、蔵書数が膨大で処分に難儀された著者による「蔵書を速やかに手放しなさい」という、読者への助言です。
私(失敗)の体験にもとづく、あとからくる人たちへの教訓。
第一に、蔵書の大幅削減はできるだけ早くはじめること。できれば体力・気力のある60代なかばまでに。
第二に、いったん決心したら、思いきって一気にやってしまうこと。そうすれば、蔵書ロスの悲哀からたちなおる余裕も生まれるだろう。(pp.134)
わたしは「60代」前半、勤務先の大学を退職するタイミングで、研究室および自宅に置いていた本のほとんどを「思いきって一気に」捨てました。
清々したうえ、自分の家があんがい広く感じられて驚きました。
「蔵書ロスの悲哀」はまったく起こらなかったです。
ご助言に先だち出血大処分を敢行したわたしは、津野氏に勝利したかのごとき気分になりました(爾後、新たな本が累増しだしてきたため、圧勝とまではいえません)。
いっぽう、氏の将来のご計画は、
ミステリーや時代小説にかぎらず、若いころ読みそこねた「かたい本」も、できればなんとか読んでおきたい。(pp.61)
『最後の~』内で取りあげられていた書籍類には古典や専門書といった「かたい本」が多かったにもかかわらず、依然、学究的な姿勢を堅持していらっしゃるわけです。
ご立派です。
わたしなど「引退したらミステリーや時代小説を楽しもう。金輪際(こんりんざい)かたい本なんか読まない」と思っているので、こちらでは氏に完敗しました。
金原俊輔