最近読んだ本575:『我が身を守る法律知識』、瀬木比呂志 著、講談社現代新書、2023年

元・裁判官の瀬木氏(1954年生まれ)が一般読者を対象に執筆された分りやすい法律書です。

本書は(中略)普通の日本人が一生の間に経験する可能性のある各分野の法的紛争、また生活や取引上の危険を避けるために、あるいはそれらに適切に対処するために必要な、法的知識や情報を説くものです。(pp.6)

まさにそのような作品。

何気なく過ごしている毎日の生活の背後に多様な法律が存在する現実を認識させられます。

わたしは本書を読みつつ、ある傾向の増大を「そういえば……」と気づかされたり、法律を意識していなかった自分が意識しないままでいてはダメだと反省させられたり、しました。

それでは、どんな気づきを得て、どんな反省をしたか、著者の文章をふたつ引用させていただき、ご説明します。

まず、気づきは、職場におけるハラスメント関連。

ハラスメントについては、悪質な行為である反面、立証はそれほど容易ではないので、その経過を具体的に記録しておくことや証拠になるようなもの(たとえばメールなど)があればそれらを保存しておくことが重要です。また、これについては、小型の録音機等を用いた無断録音も、証拠収集の手段として許されると思います。(pp.204)

かつて、パワハラ被害のご相談にいらしたかたが証拠をおもちでないためご支援に苦慮したケースが少なからずあったものの、最近、小型ボイスレコーダーで上司の怒鳴り声などを録音なさっている例がめずらしくなくなりました。

引用文に接し、上記の傾向に気づいたのです。

無断録音行為は法的に認められるみたいで、だとしたら、今後この対応策は普及してゆくこととなるでしょう。

つぎに、反省は、名誉棄損についてです。

インターネットには匿名の誹謗(ひぼう)中傷が非常に多いわけですが、摘示した事実の真実性等が証明できなければ名誉棄損で、事実を摘示しなくてもその表現によっては侮辱罪で、刑事、民事の責任を問われえます。通常は放置されていますが、悪質なものについては、刑事公訴を求める告訴や損害賠償請求がありえ、そうすると、「リツイートをも含め単なる拡散者もその対象になる可能性がある」ことには、ご注意ください。(pp.112)

わたしはこのコラム「最近読んだ本」で、良いと感じなかった書籍に関し遠慮なく低評価コメントを記してきました。

これがもしかすると名誉棄損や侮辱罪に該当してしまうかもしれない。

いままで何ごとも起こらなかったのは、たんに著者や出版社が気づかなかったおかげかもしれない。

無礼な誹謗中傷でなく書評として許容される範囲内の筆致を用い、根拠も示しながら書いてきたつもりですが、そう受け止めない人々とておられるでしょう。

ますます細心の注意を払うようにしなければと自戒いたしました。

以上、『我が身を守る法律知識』は、役に立つ一冊。

物足りなかった点は……、おっと、やめておきます。

金原俊輔