最近読んだマンガ29:『Time Tuber ゆかり 1』、秋本治 作画、集英社、2024年
上掲書は、
『こちら葛飾区亀有公園前派出所』シリーズ、秋本治 作画、集英社、1976年~2016年
で有名な、秋本氏(1952年生まれ)の新作です。
高校1年生の青山ゆかりが「デウス・エクス・マキナ」なる魔法の時計を使って昭和時代と令和の現在を行き来するマンガ。
目次の「ゲーム編」「フィギュア編」「プラモ編」「特撮編」で分るとおり、極度にオタクっぽい内容です。
ゲームにもフィギュアにもプラモにも興味をもっていない当方がある程度理解できたのは「特撮編」だけでした。
とはいえ、明るい作品で、楽しく読み進むことができます。
以下、本書のページを繰りながら抱いた感想をランダムに書かせていただくと、まず、主人公の名前の「ゆかり」。
設定は令和の少女であるのに、床しいというか、昭和の女性のお名前というか、昭和30年(1955年)生まれのわたしが嬉しくなるネーミングがなされました。
つぎに、おおらかで些事にこだわらないゆかりの性格が、明るいマンガをより明るくしている、と感じます。
なにしろ彼女は、借金をこさえて夜逃げした父親に対し強い怒りを向けるではなく、また、危なそうな不動産業者らが自分のマンションまで督促に押しかけてきてもパニックにならないのです(上記どちらも「些事」などではないにせよ)。
3番目。
ゆかりが赴(おもむ)いた時代に、うっかり自身の「学生証(P. 31)」を置き忘れてしまった結果、そのとき出会った人物が高齢者となって、現代に戻っている(いまだ若い)ゆかりを探しだし、訪ねてくるシーンがあります。
また、別の章で、過去へ行ったまま元の世界には帰らない選択をした人物も登場しました。
こういった場面が何だかわたしの心に沁み、タイム・マシンをあつかったものとしては世界最初期のSF小説のひとつ、
『タイム・マシン』、H・G・ウェルズ 著、角川書店、1966年
を読んだときにもやはりしみじみした件を思い起こしました。
4番目です。
本書「プラモ編」内で、不意に、
『0戦太郎』、辻なおき 作画、少年画報社、1961年~1964年
が紹介されました。
わたしはこの『0戦太郎』を愛読していたので、驚いたし、なつかしかったです。
小学生だったころ、動いて咆哮するゴジラのプラモデルを、弟は動いて口が赤く光るガメラのプラモデルを、それぞれ親から買ってもらい、両プラモはかなり長く自宅にありました。
そちら方面のエピソードも描かれていたら、もっとなつかしかったことでしょう……。
最後の感想になります。
秋本氏は『週刊少年ジャンプ』誌で『こち亀』を長期連載なさり、多忙なマンガ家の中でもとりわけお忙しかったと推察されますが、いったいどうやって『Time Tuber ゆかり』に詰め込んでいらっしゃるサブカル情報を頭に入れられたのでしょうか?
おそるべき博識と敬服いたしました。
金原俊輔