『正社員消滅』、竹信三恵子著、朝日新書、2017年。

私たちはいま、二つの「正社員消滅」に直面しているといえるのではないだろうか。ひとつは、非正社員の増加による労働現場からの文字通りの「正社員消滅」。そしてもうひとつは、「名ばかり正社員」に象徴されるように、もはや正社員であることが「安定と安心の生活」を全く担保しなくなったという意味での「正社員消滅」だ。(pp.10)

まだ本筋に入っていない「はじめに」で書かれていたこの文章が、上掲書の概要を説明しています。

正社員という立場をめぐり、各種の事例や調査結果を参考に、日本の現状を展望した本でした。

非正社員の数が90パーセントを超す会社がある、正社員になると給料が下がり拘束が強まる会社がある、正社員を追い出すことに協力するビジネスがある、などの深刻な話題が、じゅうぶんなデータと共に語られています。

まさに博引旁証(はくいんぼうしょう)だったといえるでしょう。

竹信氏は和光大学教授で、和光はわたしの母校ですから、ご本人にお会いしたことはないものの親しみをおぼえます。

けれども、本書を読み終え、わたしには少々物足りなさが残りました。
物足りなかった理由はふたつあります。

ひとつは、「では、勤労者はこれからどうすれば良いのか」的な助言があまり記されていなかった点です。
230ページから約3ページにわたってその方面のアドバイスがあるとはいえ、全体に比して短すぎるように感じました。

もうひとつ、「では、企業はこれからどうすれば良いのか」に関し、書中ほとんど何も提言がなされていなかったことも理由です。

おそらく『正社員消滅』のタイトルを見て書籍を購入した人々は、わたしがそうであったように、2点を知りたいと期待していたのではないでしょうか。

もっと著者のお考えを書き込んでほしかったという思いを禁じ得ません。

金原俊輔