『知的ヒントの見つけ方』、立花隆著、文春新書、2018年。

立花氏(1940年生まれ)の諸作のうち、わたしが名著と感嘆したのは、

『田中角栄研究 全記録』、講談社文庫(1982年)

『日本共産党の研究』、講談社文庫(1983年)

以上の2冊です。

ときどき出版しておられる書評本もかなりおもしろいです。

とはいえ、わたしは同氏の全作品を読んだわけではありません。

ほかにも良い書物を多々執筆されているだろうと想像します。

では、わたしが氏をどう思っているかというと、尊敬する呉智英氏(1946年生まれ)の、宮崎哲弥氏との対談『放談の王道』、時事通信社(1999年)におけるご発言と同じです。

日本でいちばん尊敬すべき知識人であると一部で言われている立花隆のことなんだけど(中略)。40万人もの人が仰ぎ見なければならないような、そんなに偉い人なのだろうか。そのことについては、多大な疑問があるね。(pp.175)

40万人というのは(呉氏が算出した)日本の知識人の数。

その40万人にまったく含まれていないわたしごときが同意するのは誠に僭越なのですが……。

わたしの場合、立花氏の「似非科学」に対する無防備さが不満で、すばらしいジャーナリストと認めつつも、氏のお仕事を高評価する気もちはつい弱まってしまいます。

しかるに、本書『知的ヒントの見つけ方』は、似非科学っぽさが目立たないエッセイでした。

むしろ正統科学がらみの話題があちこちで論じられており、たとえば、

火山の観測に全く新しい新兵器が登場して、従来の火山学者が想像もしなかったような手段で、火山の内部情報が得られるようになってきたのだ。それは、宇宙線をX線のように使って、火山の内部をX線写真を撮るように透視してしまうという方法である。
まるで、ウソみたいな話だが、これはすでにほぼ実用技術に達していて、すでに、浅間山、桜島、薩摩硫黄島、有珠山、昭和新山などで実験が行われ、立派に内部観測に成功している。(pp.95)

こういう点はとても良かったです。

反面、文章が荒れていて、送り仮名の乱れや同じ表現の繰り返しなどが気になりました。

引用した「新しい新兵器」は変な言葉ですし、文中「すでに」が重なってしまったところもあります。

「政治と対峙する」章の「ロッキードと森友」は、だれにだってできる考察でしょう。

著者の往時の話題作と比較すると、それほど良書ではない一冊だった、といわざるを得ません。

いまの立花氏におかれては独自の調査および独自の視点で読者をぐいぐい引っ張ってゆくお力が衰えてしまわれたのではないでしょうか。

『知的ヒントの~』に目を通し、わたしは氏ほどに頭脳明晰なかたであっても加齢による衰退を示している(かもしれない)ことを感じて、自分の年齢を思い、慄然となりました。

金原俊輔