『日本企業はなぜ世界で通用しなくなったのか』、林原健著、ベスト新書、2018年。

グループ企業「林原」を経営されていた林原氏(1942年生まれ)によるビジネス啓蒙書です。

ご自身の生い立ち、お父上のこと、経営失敗にいたるまでの経緯などが、おだやかな筆致で書かれていました。

まず、著者はかなり本格的に空手をなさっている由。

格闘技ファンのわたしは景仰しました。

つぎに、父・林原一郎(1908~1961)は、カバヤキャラメルを作ったかたなのだそうです。

わたしは幼かったころ、ずいぶん同キャラメルのお世話になりました。

子ども時代の味、昭和の味を、なつかしく思いだします。

本書におけるビジネス領域へのアドバイスとしては、たとえば、ソニーの井深大(1908~1997)のご発言、

「頭を不必要に下げてはいけません」
この言葉は、当時くだらない接待や交渉ごとに明け暮れ、ほとほと嫌気が差していた私の心にとても響きました。(中略)井深さんはきっと「よそには真似のできない独自の技術を確立すれば、頭など下げなくても会社の利益は生み出せる」ことを私に伝えたかったのでしょう。(pp.18)

製品の研究に関する心がまえ、

インターフェロンでお世話になった長野泰一先生は、「『独創』は出したいと思っている人間には出せないんです。事実を丹念に追っているうちに、新しいことに巡り遭い、それが結果として『独創』となるのです」と仰られていました。(pp.107)

このように重みのある言説の紹介がなされていました。

上記おふたりの言葉を知っただけでも、わたしには読んだ甲斐がある一冊でした。

いっぽう、本書の後半は突然オカルトっぽい雰囲気に変わってゆきます。

オカルトが好きな読者はいるでしょうけれども、わたしには合いません。

そのうえ、全般をとおして、著者の経営が林原グループの業績不振を招き、2011年に「会社更生法」を申請する事態になってしまったことへの反省が、ほとんど述べられていませんでした。

そうした点では「非の打ちどころがない」とまでは評価できない作品でした。

金原俊輔