『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』、津川友介著、東洋経済新聞社、2018年。

上掲書は、わたしが購読している『長崎新聞』の書評欄で取りあげられ推奨されていたので、読みました。

内容を整理します。

健康によいという証拠がしっかり出ている食べものがあり、それは、

①魚、②野菜と果物(フルーツジュース、じゃがいもは含まない)、③茶色い炭水化物、④オリーブオイル、⑤ナッツ類の5つである。(pp.28)

ここでいう「茶色い炭水化物」とは、玄米、雑穀類、蕎麦(ただし、十割蕎麦や二八蕎麦のように蕎麦粉の割合が多いもの)、全粒粉パン、などです。

要するに精製されていない炭水化物のこと。

なお、本書において「健康によい」の表現は「脳卒中、心筋梗塞、がんなどのリスクを下げる(pp.28)」という意味合いで用いられていました。

いっぽう、健康に悪い食べものは、

①赤い肉(牛肉や豚肉のこと。鶏肉は含まない。ハムやソーセージなどの加工肉は特に体に悪い)、②白い炭水化物、③バターなどの飽和脂肪酸の3つである。(pp.28)

由でした。

白い炭水化物とは、白米、食パン、うどん、ラーメン、などを指します。

さらに、やせる食べもの(または、あまり太らない食べもの)として、玄米、蕎麦、野菜、果物、ナッツ類、ヨーグルト、が紹介されていました。

「健康によい食べもの」と、ほぼ重複しています。

以上、『世界一シンプルで科学的に~』では「エビデンス(科学性が高い研究を通して得られた証拠)」を交えながら、こうした情報が丁寧に説明されていました。

わたしは医学・栄養学の素人ですので、津川氏が主張されているエビデンスがどの程度まで確固たるものであるのか、判断できません。

それにしても、説得力があり、おもしろい本でした。

和食が(意外にも)たいして健康的ではない、タマゴは週6個ぐらいに抑えるべきである、といった興味ぶかい話題も含まれています。

著者は、アメリカのカリフォルニア大学ロサンゼルス校(「UCLA」の略称で知られる名門)で、内科学の助教授をされている医学者。

医学者としてエビデンスに基づき、この啓蒙書を執筆されました。

わたしは著者が書内で示されているご姿勢を支持します。

それは、たとえば2018年現在、日本でかなり流行中の「炭水化物制限ダイエット」に関し、

極端な炭水化物制限の健康に対する長期的な影響はまだわかっておらず、心臓病などのリスクが上がる可能性も疑われている。いずれにしても、単純に「炭水化物だけ減らせばやせる」と書かれた本や指導者は、これらのエビデンスを十分理解していないと思われるので、あまり信用しない方が賢明だろう。(pp.59)

つぎに、乳製品(牛乳、チーズ、ヨーグルト、など)を摂りすぎると「前立腺がん」「卵巣がん」のリスクが上がる旨のエビデンスについて語りつつ、

日本でも、色々な省庁で健康的な食事に関する情報が開示されているが、それらも関連業界の政治的なロビイングの影響を受けている可能性があることを理解しておく必要がある。つまり、今回の乳製品のように、科学的にはがんの発生と関係がある可能性があったとしても、できるだけ摂取しないようにするのが良いと推奨することが政治的に難しく、その結果として「1日○○くらい摂取しましょう」という政治的な妥協点に落ち着くこともある。(pp.99)

メディアにたいしては、

テレビ、「健康本」、インターネットの健康情報は皆さんにとって有益な情報を届けてあげようという善意のもとで情報を提供しているのではない。健康にはみんな興味があるので、それをマーケティングのツールとして使えば高い視聴率や売り上げを達成できるだろう、というマインドセットで作られている。(pp.166)

このような、だれにも遠慮せず本質を衝く発言をされるご姿勢です。

アメリカ在住なので忖度しなければならない日本人関係者が少ないのかもしれません。

読者にはありがたいことです。

余談ながら、わたしは自分も身を置く「行動主義心理学」の学者たちが他学派へ同様の物言いをズバズバする傾向に思いいたりました(わたし自身、似た傾向を有しています)。

行動主義心理学はエビデンスに基づいており、そこに著者の世界との共通点があるわけです。

もうひとつ余談ですが、読書中、わたしには「魚と玄米がとりわけ身体に有益な食品であるのなら、玄米寿司レストランという新ビジネスはどうだろう」との着想がわきました。

むろん店内に十割蕎麦も準備して。

お店の名称は(「すしざんまい」に対抗し)「すしげんまい」はどうか?

おそらく実行しないでしょうけれども、感想が健康の件からビジネスの件にスピンオフしてしまうほど、イマジネーションが刺激される本でした。

金原俊輔