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『東京大田区・弁当屋のすごい経営』、菅原勇一郎著、扶桑社、2018年。

東京都に所在する「玉子屋」は、お弁当をつくり昼食時に配達する会社です。

同社が契約している事業所数は約5000件で、配達先は1万箇所以上。

1日の平均食数が7万食。

年商はおおむね90億円の由。

ローカル企業とはいえ業界大手であり、かなり安定した経営のようです。

上掲書は同社の代表取締役社長(1969年生まれ)がお書きになったエッセイでした。

巻頭に1週間分の日替わり弁当の写真が掲載されていて、非常においしそうです。

おかず類が豪華なのですが、なによりも、

弁当にとってご飯が美味しいことは決定的に重要なのですが、そのことに気づいていない経営者が多いと思います。(pp.77)

と、良いお米を使っているためです。

たしかに写真からも高級米っぽさがにじみでています。

ご飯は弁当に毎日入る食材だから。当然、原価に占める割合は大きく、いい米を使えば原価率は上がります。(pp.77)

では、どれほどの原価率かというと、

日替わり弁当は450円。その原価率は2017年で53%前後。つまり、一食にかける材料費は238円50銭ほどです。これは純然たる食材費で、容器代や物流費、人件費などは含まれていません。(pp.67)

外食産業の原価率はふつう30パーセント台、高くても40パーセント台、と聞いています。

そうしたなか、玉子屋さんは50パーセントを超す原価率でがんばっている、つまり食材費にお金を注いでおり儲けが抑えられている、ということになります。

頭が下がる経営方針です。

経営方針といえば、書中において、ビジネスを展開してゆくうえでの菅原氏のこだわり・覚悟が多々語られていました。

2004年に創業者の父親から事業を引き継ぎ、10数年で何倍もの大きさに成長させた氏のご工夫やご苦労そして自信が随処に散りばめられている本でした。

業種は異なっていても経営に携わる人ならば目を通しておくべき内容と考えます。

さらに、230ページで紹介されていた「事業に失敗するこつ 12箇条」は、たとえば「第3条 ひまがないといって本を読まぬこと」など、参考になりました。

このコラムに全文を書き写したいぐらいですが、勝手にそんなことをしてはいけないと思いますので、控えます。

金原俊輔

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