最近読んだ本436

『赤い日本』、櫻井よしこ 著、産経セレクト、2021年。

櫻井氏(1945年生まれ)におかれては憂国の情がお強く、そのため、ご著作を読む側までが憂いを高じさせてしまいます。

今回の書物も同様でした。

わが国の現状や将来を鑑(かんが)みれば当然で、世人はぜひ、氏のご主張に耳を傾け、気になったところだけでも考察してみるべきと希望いたします。

さて、上掲書の標題には「中国に支配されているかのような(pp.15)」日本、という意味合いがこめられていました。

つまり本邦と中華人民共和国の関係を俯瞰した内容です。

書中、櫻井氏の悲憤慷慨が炸裂(さくれつ)しました。

氏は香港民主活動家の周庭(アグネス・チョウ)さんを語りながら、

私は本当に涙が出そうになりました。(中略)
命の危険を感じて、それでも頑張ろう、そのためには今まで信じてきた政治団体をとにかく抜けないと相手に口実を与える、と。でも命さえあれば私は闘い続けることができるという、この悲痛な叫びを、なぜもっと日本の首相は聞いてくれないのだろうと思います。なぜ自民党はもっと聞いてくれないのだろうと思います。(pp.71)

沖縄県石垣市の尖閣諸島に関し、日本政府が、

遠慮して、「大人の対応」で中国にはっきりとモノを言わないために、いつの間にか立場が逆転していくのです。(中略)
いまや中国が私たちに出ていけと言うようになった。いまでは偽装した日本の漁船が入って来ているとまで、彼らは言うわけです。
ここまで立場が逆転してしまったのは日本側の「大人の対応」ゆえですが、その自覚は外交を担う人々にあるのでしょうか。(pp.89)

中国共産党による内モンゴル弾圧の問題では、

モンゴルのためにも、アジアのためにも、中国の力による現状変更や、世界の秩序の破壊に対して正論を突きつけ抗議し、勝手にさせないように抑止する大きな責任が日本にはあると思うのです。日本人はもっと責任を感じると同時に、実は我が国には力があることを自覚して、その力に見合った責任を果たそうと考えることが大事です。(pp.156)

どれも正論と思われ、わたしは支持いたします。

とはいえ、日本が中国相手に断固たる言動をしめした場合、なにが起こり得るか?

まずは、いま中国に在留している邦人たちの身が危うくなります。

邦人は同国全域に12万人以上居住しているといわれ、短期的な旅行者も含めればいっそう大きな数字になるでしょう。

この12万を超える良民が日本へ帰国できなくなって、おそらくは殺傷されるのです。

国として動きようがありません。

新型コロナウイルス感染症が大陸にて拡大した2020年前半が千載一遇のチャンスでした。

あのとき日本政府命令ですべての在留者を中国から退去させれば良かったのです。

もはや手遅れですが……。

『赤い日本』は櫻井氏と識者たちとの座談形式。

わたしにとって、政治家の小野寺五典氏および佐藤正久氏、航空自衛隊OBでいらっしゃる織田邦男氏、ジャーナリスト田北真樹子氏、こうしたかたがたのご意見が参考になりました。

金原俊輔

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