最近読んだ本400

『韓国問題の新常識』、Voice編集部 編、PHP新書、2020年。

日本と韓国のあいだに横たわるいろいろな軋轢を専門家11名が論考した書物です。

両国は長らく揉めつづけており、その結果、生じた問題の変容が早く、本書はわずか3カ月前に出版されたものであるにもかかわらず、やや古びてしまっている箇所が散見されました。

たとえば、韓国の元・徴用工たちが日本企業を相手に自国で起こした損害賠償請求裁判の件。

原告勝訴の判決を受け、

日本政府は「1965年の日韓請求権協定を破壊する判決だ」「判決を認めれば、請求権協定をもとに積み重ねてきた日本の経済協力の根拠が失われ、韓国人全体の利益が損なわれる」と訴え、繰り返し協定に基づく外交協議を呼びかけてきた。
だが、文在寅政権は日本側の呼びかけを黙殺した。(中略)
文氏はそのとき、「元徴用工の問題は日本の植民地支配があったから起きた問題だ」と反論して、さらに「日本の政治家がこの問題を悪用している」と主張。(pp.123)

ところが2021年1月、文大統領は「判決にすこし困惑している」「日本企業の資産現金化は望ましくない」などと発言しました。

なぜこのような軟化にいたったのか、現時点(2021年1月)では不明です。

『韓国問題の~』は、既述のように今となっては新鮮味が減じた話題が含まれているにはせよ、執筆陣のみなさまが冷静かつ公正な意見をお書きになっていて、好感をもてる内容でした。

日本への愛情を根底に、おおむね韓国にも寛容な目を向けていらっしゃるように思われます。

わたしが「たしかに」と膝を打ったのは、

河野太郎外務大臣(当時)が駐日韓国大使との面談時に相手方の話を遮って「非常に無礼だ」と叱りつけた行為は最低のものだった。もちろん、外務大臣が駐日韓国大使の日本政府を舐めた態度に対して毅然とした対応を取ることは当然のことだ。
しかし一国の外務大臣である以上、その行為はTPOを踏まえたうえでの振る舞いでなければならない。(中略)
外務大臣が徴用工問題をめぐって駐日大使を公衆の面前で叱り飛ばす動画が相手国の手に渡ったデメリットは計り知れない。(pp.143)

同感です。

わたしとて韓国が日本へ示してきた態度には不快をおぼえているのですが、ニュースで河野大臣の振る舞いを視聴した際、わが国の「武士の情け」「武士は相見互い」精神を欠いた残念な挙措と、嘆息せざるを得ませんでした。

1933年、松岡洋右(1880~1946)代表が国際連盟を脱退した折の「我が代表堂々退場す(ⓒ 朝日新聞社)」を連想したほどです(松岡はそのとき椅子を蹴り上げたという説もあります)。

ただし、わたしは国際連盟脱退につき高校「日本史」授業で教わった程度の知識しか有していません。

松岡の言動には「武士は食わねど高楊枝」的な悲哀が潜んでいたのかもしれないです。

金原俊輔

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