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『日本人が知らない世界の黒幕:メディアが報じない真実』、馬渕睦夫 著、SB新書、2021年。

「世界の黒幕」とは「ディープステート」を指します。

このディープステート、

アメリカを動かしている本当の黒幕勢力であり(後略)。(pp.18)

1912年、ウォール街のユダヤ系金融資本家たちが(中略)原点です。(pp.19)

思想的なバックグラウンドは、リベラル思想=社会主義的なユダヤ思想です。(pp.19)

といったものである由。

馬渕氏(1946年生まれ)は、アメリカ合衆国の、

国家の中枢の相当部分が反トランプ陣営(ディープステート)に属している(後略)。(pp.27)

トランプ大統領は、ディープステートが仕組んだ前代未聞の不正選挙のために、ホワイトハウスを追われました。(pp.3)

かく指摘されました。

しかも、

ロシア革命、ケネディ大統領暗殺、そして南北戦争、それに先立つアンドリュー・ジャクソンの暗殺未遂事件(後略)。(pp.15)

こうした歴史上の大事すら裏でディープステートが糸をひいていたとご主張。

では、なぜ、われわれ一般人がディープステートに関する情報をもっていないかといえば、

昔も今も出版業界を押さえているのはディープステートです。ディープステートが自分に不利になるような本を世界に広めるはずはありません。(pp.46)

なのだそうです。

わたしには分りません。

もしディープステートが実在するとして、それがどの程度の力を有しており、いかなる影響を行使しているか、判断しようがないのです。

そんなわけで、わたしは『日本人が知らない~』を読みながら、つい、精神分析学が「無意識」なる怪しい概念をつかって何でも説明してみせる所業を連想してしまいました。

本書においては、ディープステートの話題が終了したのちも、あまり得心できない議論が散見されます。

第4章「観光立国は後進国の策」項が、一例。

2019年は(中略)訪日外国人数で3188万人、消費額で4兆8135億円の過去最高を記録しました。(中略)
しかし、観光庁の発表によれば、日本人国内旅行消費額は2019年の年間値で21兆9312億円です。日本人による国内観光を推進する方が、地方再生にはるかにメリットがあるということはこの数字からも明らかでしょう。(pp.148)

たしかに金額の多寡はあるようですが、「訪日外国人数」を増やしつつ「日本人による国内観光」も推進するという二本立てで、まったく問題ないのではないでしょうか。

以上、失礼ですけれども、『日本人が知らない~』への肯定的評価はできませんでした。

それはそうと、

2021年2月、長崎大学が、発酵食品に多く含まれる「5-アミノレブリン酸」、通称「5-ALA(ファイブアラ)」と呼ばれるアミノ酸が新型コロナウイルスに対して強い感染抑制効果があることを発見したと発表しました。(pp.168)

引用文は「ひょっとしたら長崎大学が全世界を救うのではないか」と長崎県民を期待させている研究への言及で、書いてくださり嬉しいです。

金原俊輔

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