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『ミャンマー危機:選択を迫られる日本』、永杉豊 著、扶桑社新書、2021年。

ミャンマーといえば、

竹山道雄著『ビルマの竪琴』、中央公論社(1948年)

を通し、われわれ日本人になじみが深い国です。

最近は、アウンサン・スーチー氏のノーベル平和賞受賞(1991年)、2017年に顕在化した少数民族ロヒンギャ弾圧問題などが、世界の耳目をあつめました。

そして2021年2月、このミャンマーで国軍によるクーデターが勃発。

クーデターの背景は、

国軍は軍事政権を復活し、かつてのように武力で国民を統制しようとする。(pp.37)

なんの理念もない手前勝手な暴走である模様です。

クーデター自体は史上あちこちで発生しており、特異な事態ではないものの、ミャンマーのクーデターで驚かされたのは軍が国民に銃を向けつづけていること。

抗議デモに参加した市民100人以上が国軍により殺害され、数百人の負傷者まで出ていた。犠牲者には子供も含まれていて、クーデター後で最悪の一日となった。(pp.63)

4月9日には、バゴー市内で大量に動員された警察隊と国軍兵士らがデモ隊に迫撃砲、機関銃、自動小銃などで無差別攻撃を行ない、若者ら83人が死亡、200人以上が行方不明となった。(中略)
5月23日の時点で、すでに国軍による市民の死者は815人(子供54人を含む)、拘束者5367人にまで上る。(pp.68)

無残というしかありません。

わたしは、うっかり「日本の『二・二六事件』みたいな感じで政権とか政府要人だけに敵対するのがクーデター」と思い込んでいたため、愕然としました(なお「二・二六事件」はクーデターではなくクーデター未遂)。

2021年8月現在、まだミャンマーの情勢は落ち着いておらず、おなじ年の5月には、サッカー国際試合で来訪した同国選手が日本へ難民申請をする事案も起こりました。

『ミャンマー危機』の著者・永杉氏(1960年生まれ)は、2013年からミャンマーにお住みになられ、現地で邦人用情報誌を発行されているかたです。

書中、ミャンマーの歴史と現状を簡明に語ってくださいました。

クーデターにたいする各国の反応もまとめられていて、それによれば、クーデター生起後、欧米は国軍系企業に経済制裁を課したいっぽう、

世界で唯一軍幹部と交渉できると自負してきた日本政府だが、相変わらず深い懸念や非難を表明するだけで具体的な制裁にも踏み込んでいない。その姿勢にミャンマー人は、日本政府に対して持っていた強い期待が徐々に失望へと変わってきている。(pp.125)

情けないかぎりです。

ミャンマー人は非常に親日的で、私の感覚でほぼ100%の国民が親日だと感じるぐらい日本人に好意的であった。(pp.9)

好意をお受けしているので、日本政財界はミャンマー国民の期待にこたえてあげてほしい……。

ところで、わたしはこれまでアウンサン・スーチー氏に疑義を呈した本を、何冊か読みました。

たとえば、

高山正之著『変見自在 スーチー女史は善人か』、新潮文庫(2011年)

など。

そうした諸作と比べた場合、永杉氏の『ミャンマー危機』は、かなりスーチー氏寄りと感じられます。

氏には氏のお立場・お考えがあるわけなんでしょう。

最後に、わたしはロヒンギャ問題に胸を痛めているのですが、

今回の軍事クーデターで、国軍に弾圧された多数派のビルマ族も「我々も国軍による虐殺を受けてロヒンギャの気持ちが分かった」として、今まであまり関心の無かったロヒンギャ問題に目を向け始めている。(pp.103)

不幸中の幸いと言いますか、「この件だけは、まずもって良かった」と思いました。

金原俊輔