最近読んだ本663:『国家の危機』、ボブ・ウッドワード、ロバート・コスタ 共著、日経ビジネス人文庫、2024年

著者のおひとり、ウッドワード氏(1943年生まれ)。

ボブ・ウッドワード 著『FEAR 恐怖の男:トランプ政権の真実』、日本経済新聞出版社(2018年)「最近読んだ本220」

ボブ・ウッドワード 著『RAGE 怒り』、日本経済新聞出版(2020年)「最近読んだ本397」

以上のようにドナルド・トランプ氏(1946年生まれ)およびその周辺を徹底取材なさってきたジャーナリストです。

今回の『国家の危機』は、まず、2020年11月に実施されたアメリカ合衆国大統領選挙の結果が出るまで、そして、出てから以降のトランプ大統領の悪あがき、さらに、ジョセフ・バイデン新大統領(1942年生まれ)の就任前後、などの事柄を詳述した政治ノンフィクションでした。

前作・前々作と同様「この内幕話はおもしろい」と感じさせられるエピソードの目白押しです。

バイデンは書いている。「父には自分を憐れむ時間などなかった。『立てっ!』が父の決まり文句で、私の人生を通じてそれが反響しつづけてきた。世界が頭の上に落ちてきたら? 父はいうだろう。『立てっ!』。みじめな思いでベッドに寝ていたら? 立てっ! フットボールのフィールドでぶっ倒されたら? 立てっ! 成績が悪かったら? 立てっ!(中略)
バ、バ、バ、バ、バ、バイデンと吃音が出たときにからかわれたら? 立てっ!」(P. 47)

「クソいかれたやつと交渉しているんだ」ケロッグとの会議で、トランプがいった。北朝鮮の独裁者金正恩とのやりとりのことだった。(P. 336)

こんな風に……。

なかでも本書の圧巻は、2021年1月、約800名の暴徒によるアメリカ合衆国議会議事堂襲撃のくだりでしょう。

現場にいた政治家たちすべてが危機に瀕する状況でした。

前副大統領マイク・ペンス氏(1959年生まれ)の場合、

議事堂の窓ガラスが割られはじめた。暴徒が侵入した。ほとんどがマイク・ペンスを探していた。「マイク・ペンスを吊るせ!」と叫びながら、廊下をうろついた。(中略)
表では俄作りの絞首台が建てられた。(P. 359)

まるで西部劇みたいな展開です。

アメリカという国家を構成する人々の深刻な情緒不安定ぶりや高い攻撃性が露(あら)わになりました。

ところで、第24章に記されていた、2024年大統領選挙の民主党候補であるカマラ・ハリス副大統領(1964年生まれ)の学歴に関する件。

彼女はこれにより大多数のアフリカ系アメリカ人の支持を得る可能性が推察されます。

同選挙におけるトランプ氏の当選、容易(たやす)くないのではないでしょうか?

トランプ氏は無知かつ支離滅裂かつ傍若無人ですから、アメリカにとって(世界にとっても)落選なさるほうが良いかもしれません。

金原俊輔