最近読んだ本413

『ロシアを決して信じるな』、中村逸郎 著、新潮新書、2021年。

モスクワ大学やソ連科学アカデミーでの留学経験をふくめ、長い滞露歴をおもちの中村氏(1956年生まれ)。

筑波大学の教授でいらっしゃいます。

本書はロシア連邦に精通されている氏がお書きになった同国情報でした。

わたしの場合、ロシアへは行ったことがなく、アメリカ合衆国に住んでいたころもロシア人の知己はいませんでした。

ただ、カウンセラーとしての業務のなかでウクライナから渡米してきたユダヤ系移住者のかたがたとの面談は頻繁におこない、「おそらくユダヤ人にとって暮らしにくい国なんだろうな」と想像しておりました。

上記はロシアでなくウクライナの話題ですが、わたしのアメリカ時代はソビエト連邦が崩壊する前後にあたり、かつてウクライナはソ連の領土だったので、意図的に混同させていただきました。

さて、『ロシアを~』で詳述されたのは、ロシア社会の「惨憺(さんたん)たる現実(pp.127)」です。

どれほどの惨憺ぶりかといえば、各章の各項小題を見るだけでも、

「最悪の事態、スーツケースの紛失」(pp.42)

「数字が無意味でめちゃくちゃ」(pp.61)

「騙されやすい人を狙え」(pp.70)

「嘘に嘘を重ねるのがロシア流」(pp.72)

「おんぼろバスでの喧騒」(pp.128)

「すぐに破棄される約束」(pp.162)

「善意につけ込むロシア人」(pp.168)

「不条理の国」(pp.190)

まだまだありました。

その結果、ロシア人自身が「ロシア人のいないところが『いいところ』(pp.64)」と愁嘆の声を発しているぐらいなのだそうです。

ここで中村氏の体験談をふたつ。

まず、かの国の航空会社が同氏のスーツケースを飛行機に積み忘れたため、氏が空港で対応を要求したとき、担当の女性職員は、

なぜか意気揚々と、わたしをこうなだめた。
「ここは日本ではありません。ロシアですので、明日、なにが起こるのか、だれも予想できません。あなたが明日のことを心配するなんて、わたしには驚きです」
「では、わたしはどうすればよいのですか」
「いまあなたができることは、ひたすら祈ることです」(pp.53)

つづいて、モスクワ市内で食料品を買う際、

レジの店員には細心の注意をはらってきた。紙幣を差し出すと、お釣りをごまかすことが多いからだ。買い物客から小銭を巻き上げるのだ。とくに外国人は標的にされやすい。
露骨に「お釣りがないので、チューインガムをあげるね」と1、2枚を渡されることもたびたびある。(pp.172)

わたしは「コロナ終息後に外国旅行をしよう」と計画しているのですが、ロシアは候補地から除外しておくのが無難みたいです。

本書では、ウラジーミル・プーチン大統領(1952年生まれ)が実はすでに病没しており、あるいは暗殺されてしまっており、われわれがニュースなどで目にする人物は「偽プーチン(pp.98)」だという説がある旨も語られていました。

寝耳に水でした。

ほかでは、ロシア・ウラジオストク市を中心にかなりの数の北朝鮮労働者が働いていて、彼らの労働力はロシア人たちに高評価されている現況も紹介されています。

つまり、国連安全保障理事会の対北朝鮮制裁決議が出ているにもかかわらず、「北朝鮮とロシアの関係強化(pp.145)」が深まっているようなのです。

金原俊輔

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