最近読んだ本467

『「仕事ができる」とはどういうことか?』、楠木建、山口周 共著、宝島社新書、2021年。

楠木氏(1964年生まれ)は、一橋大学の大学院教授。

多読家でいらっしゃり、以前、本コラムにて、氏が上梓された書評「最近読んだ本247」を取りあげたことがあります。

山口氏(1970年生まれ)は、著述家で、会社ご経営もしているかたのようです。

おふたりは、

仕事ができる人はなぜ稀少なのか。このシンプルな問いが本書の起点であり基点です。(pp.2)

という問題意識のもとで対談をおこなわれ、当該対談の逐語記録が『「仕事ができる」とは~』でした。

さて、引用文、人間活動の那辺(なへん)までを「仕事」と見なすのかは不明、「仕事ができる」の定義もきちんと書かれておらず、仕事ができる人は「稀少」であると明言なさったいっぽう根拠については示されていません。

わたしは「この本、良くないのでは?」と、イヤな予感におびえながら、ページを繰りだしました。

そうしたところ、けっして悪くありませんでした。

共感した箇所、啓蒙された箇所が、いくつも出てきたのです。

たとえば、

楠木:  「すぐに分析したがる人」というのがある。(中略)ひたすらSWOT分析(中略)するとか。この手の人のことを僕は専門用語で「SWOTTER」って呼んでいるんですけど。
山口:  専門用語なんですか……。
楠木:  私的専門用語です(笑)。大きな会社には経営企画部門とかそういう部署があって、しばしばSWOTTERの巣窟になっている。(後略)(pp.109)

当方自身、「SWOT分析」の作業に参加させられた経験があり、そのとき「これは、SWOT分析という手段が目的化してしまうだけの、徒労に終わる行為ではなかろうか」と、肯定的ではない意見をもちました。

同様の感想を有する知友がいたわけです。

つづいて、1993年、アメリカ合衆国の老舗IT企業「IBM」が不振にいたり、ルイス・ガースナーなる人物が立て直しのために同社CEO(最高経営責任者)に就任した際のエピソード。

山口:  ある記者が「新しいIBMのビジョンはないのか」と聞いたら、ガースナーはけっこうつむじ曲がりのところがあるので、「IBMはいま、集中治療室に入っている患者で、ありとあらゆるものが必要だが、唯一必要じゃないものはなんだと言われたら、まあビジョンだろうな」と言うわけです。
楠木:  いいですね。(pp.132)

絵に描いた餅を尊重する暇などない、という意味でしょうか。

わたしはそうした現実的な(理念にまどわされない)姿勢を支持します。

3番目に、

楠木:  「戦略をつくろう」と言うと、仕事ができない人はすぐ必殺技を探しにいくんです。飛び道具を欲しがる。いつでも「旬の飛び道具」が喧伝されているもので、今だとAIとかなんとかテックとか、必殺技めいたもの、飛び道具っぽいのが出てくるんですけど、それに先行して筋が通った独自の戦略ストーリーがなくてはならない。(pp.144)

独自の戦略を確保していてこそ最先端の技術なり何なりが武器になる、こう理解できるでしょう。

なるほどと思いました。

最後になりますが、198ページ以降に記載されていたアメリカ「ネットフリックス社 vs ブロックバスター社」の事例。

感動を禁じ得ない、小規模企業の「ジャイアント・キリング」物語でした。

本書は、楠木氏・山口氏どちらもが心配しておられた「センスがない(pp.45)」経営者であるわたしにとって、あれこれ参考になった一冊です。

金原俊輔

前の記事

最近読んだ本466

次の記事

最近読んだ本468